福井地方裁判所敦賀支部 昭和39年(ワ)32号 判決 1968年2月29日
原告
西田喜八郎
ほか一名
被告
太田有寛こと孫徳虎
ほか一名
主文
一、被告らは各自原告西田喜八郎に対し金二、三一〇、〇〇〇円、原告西田トウに対し金一、八五〇、〇〇〇円及び右各金員に対する昭和四〇年一月一七日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
二、原告らのその余の請求を棄却する。
三、訴訟費用はこれを三分し、その一を原告らの負担とし、その余を被告らの負担とする。
四、この判決は第一項に限り仮に執行することができる。
事実
原告ら訴訟代理人は、「(1)被告らは連帯して、原告西田喜八郎に対し金三、三〇三、五〇〇円、原告西田トウに対し金二、五〇〇、〇〇〇円及び右各金員に対する昭和四〇年一月一七日から、いずれも支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。(2)訴訟費用は原告らの負担とする。」との判決並びに仮執行の宣言を求め、その請求の原因として、次のとおり述べた。
一、(本件事故の発生)
被告太田有寛こと孫徳虎(以下、被告孫という)は、自動車運転手であるところ、昭和三九年八月三一日午後六時一〇分頃被告川島卯三郎こと朴三熙(以下、被告朴という)の依頼により、同被告所有の営業用普通自動車(福井四そ九八四六号)(以下、本件自動車という)を運転し、被告朴の営業用ガソリンを運送しての帰路、国道二七号線を運転進行中、敦賀市昭和町三島二号三六番地、中阪タイヤ店前に差しかかつた際、道路中央線の右側(東南側)において対向進して来た原告らの一人息子である訴外亡西田仁(当時一六才)(以下、訴外仁、または単に仁という)運転の単車に、本件自動車の車体を激突させ、よつて、仁をして頭蓋骨折により即死せしめた。
二、(被告孫の過失)
右衝突事故(以下、本件事故という)は、被告孫の過失によるものである。すなわち、被告孫は、自動車運転手として交通法規の大原則である左側通行をなすべきは勿論のこと、前記国道は前記中阪タイヤ店前から、同被告の進行方向に向つて右方に急に屈曲しており、前方の見透しが困難な場所であるから、同所を通過するに際しては、対進して来る車輌との衝突を避けるため、絶えず前方を注視し、かつ前進する車輌の追越しを避け、また直ちに停車のできる限度に減速徐行して、危害の発生を未然に防止すべき注意義務があるのに拘わらず、これを怠り、何ら減速せずして時速五〇粁で猛進し剰え道路中央線を越えて右側(東南側)に進出し、先行車を追越そうとして、これと併進し、かつ右折しようとした過失により、前記屈曲地点の道路左側(東南側)を、交通規則に従つて対進して来た仁の運転する単車に、本件自動車の車体を衝突させるに至つたものである。
三、(被告らの責任)
本件事故は、被告朴の依頼により被告孫が、被告朴所有の本件自動車を運転して、その業務に従事中発生したものである。よつて被告孫は、直接の不法行為者として民法第七〇九条により、また被告朴は、第一次的には自動車損害賠償保障法第三条により、第二次的には民法第七一五条により、本件事故によつて生じた損害を賠償すべき義務がある。
四、(損害)
(一)(仁の失つた得べかりし利益)
仁は、本件事故当時満一六才の男子であり、極めて健康体であつた。したがつて、経験則に照し、本件事故なかりせば、なお四九年余の平均余命があり、同程度生存するものと推定できるから本件事故当時在学中の福井県立敦賀工業高等学校を卒業する一八才から、なお四七年間は通常の一般労働者として稼働可能であつたものと思われる。したがつて、この間の仁の得べかりし利益は次のとおりである。
(1) 労働省調査の産業別一人平均月間現金給与総額表(読売年鑑昭和四〇年版八九九頁)によれば、昭和三八年度における全産業平均勤労者収入は、月額三二、七二七円である。
(2) 総理府統計局調査の全国勤労世帯の一世帯当り月間収支表、同年鑑九〇三頁)によれば、昭和三八年度における平均勤労世帯の一世帯(世帯人員四、一九人)当り一ケ月の実支出は四五、三二七円であり、これを世帯員四、一九人で割ると一人当りの実支出は、月額一〇、八一八円である。
(a) したがつて、被害者である仁は、前記高等学校卒業後は平均一ケ月金二一、九〇九円の純収入を得るものと推定される。
(b) そこで、右仁が四七年間に得べかりし純収入の現価をホフマン式計算表(係数は〇、二九八五)により算出すると、
(21,909円×12×47×0.2985) 三、六八八、四六八円となる。
(二)(原告らの相続)
原告両名は、仁の両親であるから、仁の死亡により各二分の一の相続分をもつて、仁の有する権利を相続によつて取得した。したがつて、原告両名の取得した前記得べかりし利益の喪失による損害賠償請求権は、各金一、八四四、二三四円である。
(三)(原告らの慰藉料)
本件事故当時、仁は、至極健康体であり、学校の成績も良く、時代の花形である工業高校の機械科に在籍していたので、卒業後は当然一流会社への就職が予想されていた。そして原告ら両名にとり、仁は文字どおり一人息子であつたから、目の中に入れても痛くない程の愛情があり、その成長だけが原告らの生きがいであつた。したがつて、本件事故によつて原告らが受けた精神的打撃は償い得ないものであるが、その一部でも慰藉するものとして、原告ら各自について金一、〇〇〇、〇〇〇円が必要である。
(四)(葬儀費用及び単車修理費)
原告西田喜八郎は、仁の葬儀費用として金一〇〇、〇〇〇円をまた本件事故により破壊された単車修理費として金三、五〇〇円を、それぞれ支出しており、右は被告らによつて賠償されるべきものである。
(五)(弁護士費用)
原告西田喜八郎は、被告両名に対する本件訴訟を提起するに際し、訴訟の遂行を弁護士北尾幸一に委任し、その着手金として金三五〇、〇〇〇円を支払い、かつ訴訟勝訴の場合の報酬として、同弁護士に対し金三五〇、〇〇〇円を支払う旨の報酬契約をなした。本件の如き複雑な訴訟は、専門家である弁護士によらなければ完全な遂行は望めないものであるから、右の費用合計金七〇〇、〇〇〇円は、当然被告らにおいて賠償すべきものである。
五、よつて、被告ら各自に対し原告西田喜八郎は、右四の(二)(三)(四)(五)の合計金三、六四七、七三四円の内金三、三〇三、五〇〇円、原告西田トウは、右四の(二)(三)の合計金二、八四四、二三四円の内金二、五〇〇、〇〇〇円、及び右各金員に対する本件訴状送達の翌日である昭和四〇年一月一七日から、いずれも支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
右のように述べ、被告らの各抗弁事実を否認し、立証として、〔証拠略〕を援用した。
被告両名訴訟代理人は、「原告らの請求を棄却する。訴訟費用は原告らの負担とする。」との判決を求め、請求原因に対する答弁及び抗弁として、次のとおり述べた。
一、(被告らの答弁)
原告らの主張事実中、被告孫が自動車運転手であること、原告ら主張の日時頃同被告が、被告朴所有の自動車を運転して国道二七号線を進行中、原告主張の場所附近において、訴外仁運転の単車と接触し、同人が頭蓋骨折によつて死亡したこと、仁が当時一六才の男子であつて原告らの一人息子であり敦賀工業高校に在学中であつたこと、原告らが仁の生長に大なる期待をかけており、その死亡によつて多大の精神的打撃を受けたこと等の事故は、いずれもこれを認めるが、その余の事実はすべて争う。
二、(被告らの抗弁)
(一) 被告朴は、後記のとおり被告孫の使用者ではないが、仮に同被告の使用者であつたとしても、その選任監督について過失がなくまた本件自動車の運行に関しても注意を怠らなかつた。すなわち被告孫は、被告朴の経営する太陽油業の従業員でなく、同被告が別途経営している土木建築請負梁川島組の下請業者の運転手であるに過ぎないところ、被告孫は、本件事故当夜偶然右太陽油業の営業所に立寄り、同営業所の従業員にして宿直勤務中の訴外松村健一と雑談中、訴外富木組より同営業所に対し、ガソリン配達方を至急に要請する旨の電話による依頼があつたところ、被告孫は右松村に対し「自分は富木組に特別の用事があるから、自動車を出してくれれば配達してやる」旨を申し出た。しかしながら、被告朴は、同営業所の営業方針として、夜間の配達は一切行わないこととしており、かつ同営業所の自動車は同営業所の所長若しくは総務主任の許可を受けなければ使用させないこととしていたので、右松村は、その由を被告孫に申し向けたが、同被告は、折柄同所に来合わせていた訴外山畑某と共に、松村に対し執拗に自動車を出してくれとせがんだため、同人はやむなく被告孫に本件自動車を使用させたものである。また、同被告は約一〇年間大阪方面において無事故運転の経歴を持つ優秀な運転技術者であつて、充分に信頼できる者であつたからこそ、本件自動車を使用せしめたものである。
(二) 本件事故は、被告孫の過失によるものではなく、専ら訴外仁の過失に基くものである。
すなわち事故現場附近は、被告孫の進行方向である敦賀市方面に向つて右カーブとなつており、同被告は、制限範囲内の速度で右事故現場の手前四〇米ないし五〇米附近に差しかかつたところ訴外仁がそのカーブを無謀な猛スピードで対向進して来たものであり、かつ道路中央線を大きく左側(西北側)に超え、何ら減速しないで猛進して来たため、被告孫がそのまま直進すれば勿論のこと、その場で停車しても右仁の運転する単車との正面衝突を免れない状況となつた。加えるに当時、該道路左側(西北側)に二台の自転車が縦列となつて被告孫の運転する本件自動車と同方向に同つて進行していたため、同被告としては、ハンドルを左へきつて本件自動車を道路左側に寄せることは不可能であつた。そこで同被告は、止むなく突差にハンドルを右へ切り、本件自動車を道路右側の中阪タイヤ店東側の空地に乗り入れ、もつて仁の運転する単車との衝突を避けようと考え、急拠ハンドルを右に切つて自動車を道路右側(東南側)に寄せたのである。このため仁の単車との正面衝突を避けることができたのであるが、その際仁が本件自動車の左側に接触したため、その場に転倒した結果死亡するに至つたものである。
したがつて、原告主張のように被告孫が先行する自動車を追越そうとしてセンターラインの右側に進出した事実は全くなく、同被告がハンドルを右へ切つて右折しようとしたのは、前記のとおり仁との衝突を避けるための応急措置であつて、これは真に止むをえない措置であつたから、同被告には何ら運転上の過失はなく本件事故は訴外仁の一方的な過失に基因するものである。
右のように述べ、〔証拠略〕を採用した。
理由
一、(争いのない事実)
被告孫が、被告朴所有の自動車を運転して、国道二七号線を進行中、原告ら主張の日時、場所において、訴外仁運転の単車と接触し同訴外人が頭蓋骨骨折によつて死亡したことは、当事者間に争いがない。
二、(本件事故に対する判断)
(一)(被告孫の過失)
〔証拠略〕を総合すると、次の事実が認められる。すなわち、本件事故現場は、敦賀市昭和町地籍中阪タイヤ商会前の国道二七号線道路(幅員約一〇米のアスフアルト舗装道路)上であり、被告孫は、前記日時、右道路を同市金山町方面より三島町方面に向け、本件自動車を運転して時速約五〇粁で北進し、前記中阪タイヤ商会手前附近にさしかかつた際、その進路前方を同方向に進行する訴外谷川幸男運転の普通自動車を追越そうとしたが、同所は、右道路がゆるい屈曲をえがき、同被告の前方数十米において見透しが十分でない場所であるから、このような場合には、自動車運転者としては、このような場所での追越しを差扣えるか、または前車の前方を十分に確認して、障害物のないことを確かめて後に、追越を実行するなど、事故の発生を防止するため充分に注意して運転進行すべき義務があるのに拘わらず、これを怠り、前方を十分に確認しないまま前記速度でセンターラインを越えて前記訴外谷川運転の自動車を追越そうとした瞬間、反対方向から一時センターラインを越え、高速度で進行して来る訴外仁運転の第二種原動機付自転車を認め、危険を感じて急拠ハンドルを右に切り、ブレーキを踏んだが及ばず、本件自動車の左側後部車体を右原動機付自転車に接触させ、同人を路上に転倒させ、よつて仁に頭蓋骨折の傷害を負わせた結果、その場で死亡するに至らせたものである。
被告ら訴訟代理人は、被告孫が、訴外谷川運転の自動車を追越そうとした事実はなく、本件事故は、訴外仁がセンターラインを越えて本件自動車に対向進して来たため、同被告はこれとの衝突を避けるため、やむなく本件自動車のハンドルを右に切つたところ、仁が本件自動車の後部車体に接触したものであるから、同被告には何らの過失がない旨主張し、いずれも成立に争いのない甲第一〇ないし第一三号証及び被告両名各本人の供述中には、右被告らの主張に沿う趣旨の記載並びに供述部分があるけれども、右は前掲証拠に対比して直ちに措信し難く、他に前記認定をしかして右被告らの主張事実を肯認するに足る証拠はない。したがつて被告らの右主張は採用できない。
(二)(被害者の過失)
もつとも、前掲各証拠によれば、訴外仁は、本件事故現場附近の状況に照し、危害の発生を防止するため徐行運転をなすべき義務があるのに拘わらず、一時センターラインを超え高速度で、本件自動車に対向進した事実が認められるから、本件事故の発生については、同人にも注意義務を怠つた過失があるものといわなければならない。しかしてその過失は本件事故発生の原因としては比較的重大であつたものと認められる。
(三)(被告孫の責任)
本件事故について、被告孫に過失があつたことは、前記認定のとおりであるから、同被告は、民法第七〇九条により本件事故によつて生じた損害を賠償すべき義務があることは明らかである。
(四)(被告朴の責任)
被告朴が、本件自動車の所有者であることは、同被告の自認するところであり、前掲各証拠によれば被告孫は、本件事故当日被告朴の経営する太陽油業の従業員である訴外松村健一に依頼されて、右太陽油業の業務であるガソリン配達の仕事を引受け、車体に「太陽油業」と表示のある本件自動車を運転して、ガソリン二罐を配達し、その帰路本件事故を惹起したことが認められ、故に右認定を動かすに足る証拠はない。しかして、右認定の事実によれば、被告孫は、臨時的ないし一時的ではあるが、被告朴の使用者として目すべきであり、かつ本件自動車を同被告の事業の執行のために運転中、本件事故を発生せしめたものというべきである。
しかして被告孫に過失があつたことは前認定のとおりであるから、被告朴は、本件自動車をその運行の用に供していた者として自賠法第三条に基き、後記人身損害を賠償すべき義務があり、かつ民法第七一五条により後記物件損害についても、これを賠償すべき義務があるものといわなければならない。
被告朴は、仮定的抗弁として、被告孫の選任監督について過失がなく、また本件自動車の運行に関しても注意を怠らなかつた旨主張するが、右事実を肯認するに足る資料なく、仮にその主張するような事実があつたとしても、いまだ前記条法条所定の免責要件を充足するものとは認め難いから、右被告の主張は採用できない。
三、(損害額に対する判断)
(一)(逸失利益)
仁が、本件事故当時一六才の男子であつて、敦賀工業高校に在学中であつたことは、当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第六号証、原告両名の各本人尋問の結果によれば、仁は極めて健康体であつて、学校の成績も中の上程度であつたことが認められるから、もし本件事故がなかつたなら、経験則に照し仁は、なお四九年余の平均余命があつて、同程度生存することができ、一八才の昭和四一年三月には高校を卒業し、同年四月から少くとも四五年間は通常の一般労働者として稼働し、収入を得たであろうと確認される。(原告は、仁の稼働可能期間を四七年間と主張するが、右主張は採用しない。)
ところで、労働省調査の産業別一人平均月間現金給与総額表(読売年鑑昭和四〇年版八九九頁)によれば、昭和三八年度における全産業平均勤労者収入は、月額三二、七二七円であり、その年額が金三九二、七二四円となることは計数上明らかであるから、右収入を得るに必要な生活費の五割程度とみて、これを控除した残金一九六、三六二円を基礎とし、前記四五年分につき仁が得べかりし総収入の現価を、ホフマン式計算法によつて年五分の割合による中間利息を年毎に控除して合算すれば、金四、五六一、六三〇円(円位未満四捨五入)となる。(なお、原告ら主張の計算法は、仁が前記のとおり一人息子であつて将来世帯主となることが予想されるのに拘わらず、平均勤労世帯実支出額を平均世帯人員四、一九人で均分して算出する点において、蓋然性に乏しく、またホフマン式計算法による算式も、年金的利益の総額を最終期の期末に一時に発生するものとみる点において合理的でないと思料されるから、これを採用しない。)しかるところ、本件事故については、前記のとおり被害者たる仁にも過失があるから、これを斟酌するときは被告らに対し賠償を請求し得る損害は、右金額のうち金二、七〇〇、〇〇〇円とするのを相当とする。
(二)(原告らの相続)
原告らが、仁の両親であることは当事者間に争いがない。したがつて、原告らは、相続によつて右金額の各二分の一にあたる金一、三五〇、〇〇〇円の損害賠償請求権をそれぞれ承継取得したものと認められる。
(三)(慰藉料)
訴外仁が原告らの一人息子であつて、敦賀工業高校に在学中であつたことは前記のとおりであり、原告らが、仁の生長に大なる期待をかけており、その死亡によつて多大の精神的打撃を受けたことは当事者間に争いのないところである。これらの事実に前認定の本件事故の態様、その他原告両名各本人尋問の結果により認められる諸般の事情をあわせ考慮し、さらに被害者の前示過失を斟酌すれば、原告らは、仁の死亡によつて蒙つた精神的苦痛に対する慰藉料として各自金五〇〇、〇〇〇円宛の支払を受けるのが相当であると認められる。
(四)(葬儀費用及び単車修理費)
原告西田喜八郎本人尋問(第一回)の結果により、いずれも真正に成立したものと認められる甲第二〇号証の一ないし一〇及び同第二一号証並びに同原告本人尋問の結果(第一、二回)をあわせると、原告西田喜八郎は、仁の葬儀費用として金一〇〇、〇〇〇円、本件事故により破壊された単車の修理費用として金三、五〇〇円をそれぞれ支出していることが認められ、右合計金一〇三、五〇〇円の支出は、本件事故と相当因果関係のある損害というべきであるが、被害者の前記過失を斟酌すれば、両原告は、そのうち被告らに対し金六〇、〇〇〇円の賠償を求めることができる。
(五)(弁護士費用)
〔証拠略〕をあわせると、原告西田喜八郎は、その主張のとおり本件損害賠償請求の訴訟の遂行を弁護士に依頼し、その着手金として金三五〇、〇〇〇円を支払い、かつ成功報酬として金三五〇、〇〇〇円を支払う旨の報酬契約をなしたことが認められる。そして、同原告が本件訴訟を提起するに当り弁護士に訴訟の遂行を依頼したことは、権利の伸長に必要やむをえない措置であつたと認めうるから、これによる支出は本件事故により通常生ずべき損害といえるのであるが、本件訴訟の性質、訴訟遂行の難易、請求認容額、前記被害者の過失、その他諸般の事情を斟酌し、右弁護士費用のうち被告らの負担すべき額は着手金二〇〇、〇〇〇円、成功報酬金二〇〇、〇〇〇円をもつて相当と認める。
四、(結論)
そうすると、被告らは、各自原告西田喜八郎に対し前項(二)、(三)、(四)、(五)の合計金二、三一〇、〇〇〇円、原告西田トウに対し前項(二)、(三)の合計金一、八五〇、〇〇〇円、及び右各金員に対する損害発生の後である昭和四〇年一月一七日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払義務があり、原告らの本訴請求は右の限度で理由があるから、これを認容し、その余は失当であるから、これを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九二条本文第九三条第一項本文を、仮執行の宣言につき同法第一九六条第一項を各適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 高津建蔵)